歐洲でのスヰデンボルグ派の景况

 今日歐洲でのスヰデンボルグ派の景况は知らないから云はない。米國では、ボストンなどにこの派の出版會社があつて、頻りに渠の大小の册子を出版するが、一向に振はない樣だ。日本にも横濱へ一度この派の教師が來て居たことがある。近頃米國から十年目に歸朝した友人の經驗談を云ふが、西部からボストンへ行つた時、紹介状を貰つて居たので、一人の牧師を訪問した。すると、『新教會』と看板が出て居たので、少し不思議に思つて這入つて見ると、それがスヰデンボルグ派の教會であつた。この友人は、僕がエメルソンを讀んで居た頃から、スヰデンボルグの事は知つて居たので、面白半分にその老牧師の話を聽いて居ると、例の『物に二方面がある』と開祖が云つたと云ひ出したので、そんなことはどこでも云ふから珍らしいことはないと笑つたが、如何にも人物が温厚なので、時々頼れて日本の事を演説してやつたさうだ。暫く經《た》つと、こゝへ紹介をして呉れた友人から手紙が來て、讀んで見ると、お前は同派に改宗する見込みがあるさうだが、そんなつもりで紹介したのではないと書いてあるので、これは不思議だ、自分もそんなつもりではないのにと思つて、出した返事が面白い――温厚な老人の頼みがあるので、時々日本の事を演説などはして居るが、先づ當分は改宗の見込みはないと思つて呉れろ。『宗教は偉人の形骸である[#「宗教は偉人の形骸である」に白丸傍点]』とカライルは云つたが、この樣なあはれな状態に墮落したら、他の宗派と同樣、徒らに信者の數をむさぼる餓鬼道である。 これから、スヰデンボルグ、エメルソン、メーテルリンク三者の愛論を述べて、三者の立ち塲と特色とを比較し、それから自説を述べることにしよう。

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