姉《あね》も、弟《おとうと》も

 姉《あね》も、弟《おとうと》も、床《とこ》の中《なか》で目《め》をさましていたのです。「もうじき、夜《よ》が明《あ》けますね。」と、弟《おとうと》は、姉《あね》の方《ほう》を向《む》いていいました。 また、今日《きょう》も電車《でんしゃ》の停留場《ていりゅうじょう》へいって、新聞《しんぶん》を売《う》らねばならないのです。弟《おとうと》は昨夜《ゆうべ》、犬《いぬ》に追《お》いかけられた夢《ゆめ》を思《おも》い出《だ》していました。「いま、じきに、製紙工場《せいしこうじょう》か、紡績工場《ぼうせきこうじょう》かの汽笛《きてき》が鳴《な》ると、五|時《じ》なんだから、それが鳴《な》ったら、お起《お》きなさいよ。姉《ねえ》さんは、もう起《お》きてご飯《はん》の支度《したく》をするから。」と、姉《あね》はいいました。 このとき、すでに母親《ははおや》は起《お》きていました。そして、姉《ねえ》さんのほうが起《お》きて、お勝手《かって》もとへくると、「今日《きょう》は、たいへんに寒《さむ》いから、もっと床《とこ》の中《なか》にもぐっておいで。いまお母《かあ》さんが、ご飯《はん》の支度《したく》して、できたら呼《よ》ぶから、それまで休《やす》んでおいでなさい。まだ、工場《こうじょう》の汽笛《きてき》が鳴《な》らないのですよ。」と、お母《かあ》さんはいわれました。「お母《かあ》さん、赤《あか》ちゃんは、よく眠《ねむ》っていますのね。」と、姉《あね》はいいました。「寒《さむ》いから、泣《な》くんですよ。いまやっと眠入《ねい》ったのです。」と、お母《かあ》さんは、答《こた》えました。 姉《ねえ》さんのほうは、もう床《とこ》にはいりませんでした。そして、お母《かあ》さんのすることをてつだいました。 地《ち》の上《うえ》は、真《ま》っ白《しろ》に霜《しも》にとざされていました。けれど、もうそこここに、人《ひと》の動《うご》く気《き》がしたり、物音《ものおと》がしはじめました。星《ほし》の光《ひかり》は、だんだんと減《へ》ってゆきました。そして、太陽《たいよう》が顔《かお》を出《だ》すには、まだすこし早《はや》かったのです。

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