それ等の城の一つ

          20[#「20」は縦中横]

 それ等の城の一つ。この城の門には兵卒が一人銃を持って佇んでいる。そのまた鉄格子《てつごうし》の門の向うには棕櫚《しゅろ》が何本もそよいでいる。

          21[#「21」は縦中横]

 この城の門の上。そこには横にいつの間《ま》にかこう云う文句が浮かび始める。――「この門に入るものは英雄となるべし。」

          22[#「22」は縦中横]

 こちらへ歩いて来る少年の姿。前の煙草屋の飾り窓は斜めに少年の後ろに立っている。少年はちょっとふり返って見た後《のち》、さっさとまた歩いて行ってしまう。

          23[#「23」は縦中横]

 吊《つ》り鐘《がね》だけ見える鐘楼《しゅろう》の内部。撞木《しゅもく》は誰かの手に綱を引かれ、徐《おもむ》ろに鐘を鳴らしはじめる。一度、二度、三度、――鐘楼の外は松の木ばかり。

          24[#「24」は縦中横]

 斜めに見た射撃屋《しゃげきや》の店。的《まと》は後ろに巻煙草の箱を積み、前に博多人形《はかたにんぎょう》を並べている。手前に並んだ空気銃の一列。人形の一つはドレッスをつけ、扇を持った西洋人の女である。少年は怯《お》ず怯《お》ずこの店にはいり、空気銃を一つとり上げて全然|無分別《むふんべつ》に的《まと》を狙《ねら》う。射撃屋の店には誰もいない。少年の姿は膝の上まで。

— posted by id at 08:11 am  

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